「地域の力で、産業廃棄物処分場予定地から憩いの公園へ!

■住民が守った自然、「上川の里」

八王子市上川町に、住民運動によって守られた緑があります。JR八王子駅の北西約10km、八王子市とあきる野市の市境に位置する上川の里です。この地域に持ち上がった産業廃棄物処分場の計画に対し、緑を大切にしたいと願う地域住民が八王子市に働きかけました。その結果、2009年の八王子市議会で緑地保全の請願が採択され、2011年には上川の里約27.9haが「特別緑地保全地区」に指定され、その一部を八王子市が買い取ることが決定しました。 特別緑地保全地区は、都市において良好な自然環境となる緑地の開発行為などを制限し、保全するための制度です。

>「特別緑地保全地区」についてはこちら

■地域住民に愛される場所へ

武蔵野市に唯一残る雑木林 上川の里は、見渡す限り田んぼと林の緑が広がり、ゆったりとした時間が流れる空間です。 この場所を地域の憩いの場として活かすため、地域住民によって作られた『上川の里づくり運営委員会』が八王子市と協働して環境整備を行っています。 上川の里づくり運営委員会は、上川町会から協力者を募り、月に1度の活動日に下草刈りや植樹などの手入れを行っています。植樹用のつつじやもみじ、アジサイなどの苗は、敷地内の圃場で種から育てています。八王子市の花であるヤマユリの保護も進めています。

また、より多くの方に上川の里を楽しんでもらおうと、散歩道を設定して順路を示す看板を付けたり、散歩の途中で休めるように手作りのテーブルやイスを設置しました。こちらの素適な案内板も地域住民の手作り!

メンバーに話を聞くと、「月に一度みんなと会えることが楽しい。」「この辺の人はみんな自分の畑を持っているから、草刈りは慣れたもの。自分ができる作業だから無理なく参加できる。」と、地域住民ならではのつながりの深さを感じました。

上川の里は、小学生の自然体験活動のフィールドとしても活用されています。
里のすぐ裏にある小学校の生徒たちは、竹の子堀りや田んぼ作業、炭焼きの体験など、1年を通して上川の里を訪れます。
大人も子供の楽しめる上川の里は、地域住民に愛されるとともにコミュニティ形成の場にもなっています。 上川の里づくり運営委員会では、平成28年に八王子市が市制施行100周年となることから、このタイミングで上川の里を自然公園にしたいと考えているそうです。 将来的には、地域の方だけでなく多くの方々がこの場所に集まり、地域の活性化に繋がっていくことが期待されています。

私が訪ねた5月は、新緑がまぶしく緑の香りに癒されるスポットだった上川の里。四季折々どんな表情を見せてくれるのか、毎回訪れるのが楽しくなる素敵な場所です。

※『上川の里づくり運営委員会』は2011~2013年度「東京の緑を守ろうプロジェクト」の助成団体です。